棚田暮らし夫婦ブログ〜日々是好日〜

かつて8300枚の棚田が広がっていた田舎に暮らす夫婦ブログ。夫婦の大切にしたい言葉は“日々是好日"。

上山集楽インターンシップ 10月12日~10月21日までの10日間の滞在

今回も10月に来てくれた海里くんが滞在をまとめてくれたのでそれを載せます。

やはり1週間以上いてくれることで私たちの活動や暮らしへの理解度は深まっていくようです。2-3日の滞在で無理にヒアリング日程組んで対応するよりも毎日の暮らしの流れも一緒に体験してもらい感じてもらえることで棚田での暮らしが特別なものではなく自分でも出来るんじゃないかというようになっていってもらえると有り難いです。

海里くんの場合は実家が島根県安来市の田舎のようでして、実家はおじいさんがお米づくりをやってお父さんは手伝わず、彼自身も手伝わないのが普通の感覚で育ったと。でもおじいさんが作ったお米は当たり前に食べさしてもらっている状態であったといいます。だから実際は農家のせがれでもあり一番身近なところに自分が知るべき課題やフィールドがあるのですが農業用語もまったくわからず棚田のことに関しても知識でしか知らないのでした。だったらうちに来た後は絶対自分の家のお米づくりや農地やどんな暮らしをしているかなどは必ず家族と話して理解を深めて欲しいと伝えました。よその田舎のことを知って自らの家のことを知らないのはもったいない、しかも地域のことを勉強したいと言っているのであれば尚更です。ということでまた、海里くんから島根の実家のことがどうだったか知ることが出来たら教えてもらおうと思います。

 

私の感想が長くなりましたが以下、彼が体験して感じたことをまとめてくれているのでご覧下さい。

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 私は10月12日~10月21日までの10日間の滞在でした。滞在の目的としては卒論研究でしたが、1週間以上私を泊めてくださった梅谷家の皆さんを始め、上山の住民の皆さん、共に活動を行ってくださった方々には心より感謝申し上げます。

 

 私も出身は島根県で水田に囲まれた田舎育ちの人間ですが、上山での生活はなつかしさも感じながら驚きも数多くありました。色々ありますが1番はやはり、上山の人々の生活と考え方です。大前提として分かったことは「上山での生活は全てが棚田ありきである」ということです。それは古い歴史をもつこの土地の景観を守るためであり、コミュニティを維持するためであり、収益を生み出すものであり、情報を発信するものであり、土砂災害を抑制するためでもあります。

上山で活動されている皆さんは本当に自分がやりたいことをしています。しかしここでの生活において農業は切り離せません(逆に農業のみでの生活も難しい)。そのため多くの人が兼業という形をとっており、「自分の活動」+「農業」というライフスタイルが主流です。特に医療関係者が診察の傍ら、草刈をしていたりすると聞いたときは驚きました。

 

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 上山の人々の考え方についても自分が想像していたものとはかなりギャップがありました。少なからず地域貢献するような活動をしている人たちは、ボランティア感覚で無償や慈善という感情が動機になっている人が多いのではないかと思っていました。もちろんそういう人もいるとは思いますし、それも立派な考えだとは思います。しかし現地で多くの人々と話をしてみると、きちんと自分たちの活動に対し、どのようにして市場価値を付随するのか、お金にならない活動に対してどのようにして仕事として成立させるのかといったことを考え、現実的に稼ぎを得ることも重要だということが分かりました。よりよい地域を目指すためには社会的弱者である小さい子供や高齢者のみが住みやすい地域ではなく、若者にも仕事があり、皆が暮らしやすいコミュニティにすること。また一時の活動というわけではなく、無理なくずっと続けていけるような現実的な目線も大事なんだなと思いました。

 

 もう1つ私が上山に来て感じたことは、よそ者にとって地域が非常に開放的ということです。偏見もありますが、やはり世間一般では田舎は人間関係が蜜な反面、閉鎖的な空間というイメージがあります。地元に長くいる方々を尊重しないといけないのは確かですが、これだけグローバル化が進んだ時代で外の人間との交流に積極的でないというのは、もったいないと個人的には思ってしまいます。

 しかし、ここ上山は昔から人の出入りが多い場所で文化として人を地域の中に受け入れられる体制が整っていたと言えます。そのため現在も住民の4分の1が移住者で、移住者と地元住民は同じ活動で共に汗を流し、イベント等の交流も盛んです。また英田上山棚田団や地域おこし協力隊等といった団体や制度が受け入れられ、現在も活躍されているのには一因としてこのような背景もあるからだと思われます。また外部からのお客さんも多く、色々な人に出会えるというのもこの地域の魅力で、地方にいながらこれだけの交流が出来て、様様な業種の人々と価値観を共有し合える場というのは、私が上山の好きになったところの1つです。

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 次に私がこの10日間で行った活動についてです。上山での初めての仕事は古民家「イゴコチ」の掃除です。結局ここの掃除は何回かやりました。私は掃除は昔から苦手で自分の部屋すらあまりやりませんが、回数をこなすうちに徐々に慣れていきました。チェックアウトの際にお客さんから「記念に」と写真を頼まれると、気に入られてもらえたようですごくうれしかったです。

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 また田んぼでは脱穀を行いました。この日はかなりの猛暑で外での活動でしたが、なんとか最後までやり遂げることができました。作業が終わった後には皆で稲を並べて文字を作って遊びました。私も一文字担当しましたが、稲に火をつけるとはっきりとした文字が浮かび上がり、驚きました。また機会があれば、もっと大きなアートに挑戦してみたいです。

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 地元のおじいちゃん、おばあちゃんが出席するサロンの食事会にも参加しました。そのための食事の準備を手伝いました。手際は決して良くなかったと思いますが、高齢者の方もふつうに食べてくださったのでよかったです。また高齢者の方々と少し話もしましたが、元気な人ばかりで色々と貴重な話を聞かせてもらいました。本当にありがとうございました。

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サロンでの食事

 

 罠に捕まっていたイノシシの屠殺も見学させてもらいました。私ももちろん普段から肉は食べていますが、このような現場を見たのは初めてで、瀕死になっても抵抗を続けるイノシシを見ると、生命のエネルギーや自然の力というものをひしひしと感じました。すごく抽象的な表現ではありますが、家畜のように生かされているのではなく、野生の中で一生懸命に生きているんだなと思いました。当然のことではありますが、食事には感謝してこれからも生きていきたいです。

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 10月20日には秋祭りがありました。秋祭りはずっとなくなっていたらしく、最近復活したと聞きました。獅子舞の踊りを見て、お神輿も担ぎました。お神輿を担いで歩くのは私の人生でも初めてで、いい体験ができました。集落の人々が集まってお祈りをしている様子には、祭りの役割や大切さを学びました。

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 この他にも様々な体験をさせてもらいました。卒論関係の調査の話以外にも「これからどうやって自分が生きていくのか」「どこで生きていくのか」等、人生の先輩方とたくさん話をさせて頂きました。自分を見直す良いきっかけになったと思います。今振り返ってみると、私は本当に流されるだけの生き方をしていました。この年になっても未だに自分がどうやって生きていくべきなのか全く分かりません。ただなんとなくで強い理由や意思をもっての行動ができていませんでした。今の私は「将来何がしたいのか?」と人から問われても、なかなか答えることが難しいです。しかし上山に移り住んだ方々は「これが好きだから、これがやりたかったから」とはっきりとした主張がありました。これからは人に対し、「自分はこれがやりたい」と強く発言できるような社会人を目指したいと思っています。またこのインターンは何よりも人の家で一定期間生活する体験ができたというのが一番大きいと思っています。

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 短い間でしたが、皆さん本当にお世話になりました。また会う機会があればよろしくお願いします。

 

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古民家カフェいちょう庵

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善ちゃん展望台から見える朝8時ごろの雲海